遺品のネガフィルムと同じ場所を巡る。叔父の見た昭和40年代の鉄道風景は、50年後の私の目にどう映るだろうか。
私の叔父は撮り鉄でした。昭和33年1月生まれ。中学生の頃から鉄道写真に目覚め、一人で日本各地を訪れ撮影していたそうです。凝り性だったようで、自宅の一角を占拠して暗室を作り、現像液の配合まで研究していた姿を家族が記憶しています。大学卒業後は建築士として活躍しましたが、病に冒され43歳でこの世を去りました。
姪である私は叔父の死から数年後に乗り鉄の魅力に目覚めるものの、叔父については僅かな記憶とともに、祖父母の家に撮影した鉄道写真が数枚飾られているのみ。もし叔父が生きていれば、あるいは存命のうちに鉄道の魅力に目覚めていれば、それは楽しい話ができたのだろうと思います。
時は流れて2018年、叔父の遺品を管理していた私の母(叔父の姉)から、大量のネガフィルムが託されました。フィルムに残されていたのは、叔父が中学生~高校生(昭和40年代後半)の頃に撮影した鉄道の数々。当時主力の輸送手段としては姿を消しつつあったSLを中心に、日本各地の懐かしい鉄道風景が収められていました。
保存状態は良いとは言えず、このままでは朽ちていくだけのフィルムを多くの人に見てもらいたい。しかし叔父はアマチュアの鉄道写真家であり、当時まだ中高生。私にはその技術や価値を正しく評価することができません。また、生きていればきっと良き趣味仲間になれたであろう叔父と、このフィルムを通じてコミュニケーションが取りたいとも思いました。
そこで、私はこのフィルムをデジタル化して整理すると共に、実際に同じ場所を訪れカメラを構えてみることにしました。
この現地訪問という活動は不思議な感覚を私にもたらしてくれます。50年前同じ場所に当時中高生だった叔父が立っていたという、そんなに大したことではないけれども壮大な感覚。そして、「ああ、確かに。ここで撮るならこのアングルだよね。わかるわかる。」というような撮影センスの奇妙な遺伝も。まさしく、叔父と取りたかったコミュニケーションができているかのような気分になります。
その感覚は私の個人的なものですが、半世紀で変わった風景や車両の様子は第三者から見ても面白いのではないかと思います。今昔の対比や撮影ポイントの解説も交え、コミックマーケットで同人誌として頒布を予定しています。一部の写真はこのサイトにも掲載します。
私は乗り鉄ではありますが、車両や撮影スポットの知識はほとんどありません。これまでもTwitterやコミックマーケットで知り合った方々から撮影場所についていくつもヒントを頂いてきましたが、まだまだ特定できていないフィルムがたくさんあります。このサイトに順次掲載していきますので、これはここではないか?この車両はアレではないか?その情報は間違っているぞ!といったご指摘がいただければ幸いです。
このページ上部右側(スマホでは下部)の路線別ページに叔父のフィルムを掲載しています。各写真にはコメントをつけることが可能です。お書き頂いたお名前は、今後同人誌を制作する際にスペシャルサンクスとして掲載させて頂く場合がございます。掲載を望まない場合には名前を「匿名」としてご投稿ください。